ボヘミアン・ラプソディ(ネタバレあり)

公開当時、超話題となっていた本作。周りも大絶賛している人が多かったので、気になってはいたのですが、話題作程敬遠してしまう拗れた性格なもので、本日初めて鑑賞。

 

 

で、感想ですが、良作だけれど内容が薄っぺらいように感じました。というか、QUEENのことを予め知っている前提な気がしました。故にボーカルの名前と彼がエイズで亡くなったこと以外は知らない自分は、話が深堀されることなく展開されていくテンポに着いていけず、いつの間にか終わっていた印象。

 

QUEENの伝記というより、彼らの曲の伝記という感じですね。作曲やライブのシーンは圧巻で感動しましたし。

 

それでも、もっと登場人物の内面を丁寧に描いて欲しかったなと。せめて主人公のフレディだけでも。酒やドラッグ、最低男のポールに依存していく様が結構唐突に感じました。いや、何となく想像は出来ますけど、映画としては雑すぎ。

 

それにしても、ロケットマンのエルトンといいフレディといい、善人ヅラした悪い男に寄生されてしまうのが見ていて辛い!人の愛を弄ぶ奴は許せん!

両者に共通するのはどこか愛に飢えていること。そしてゲイであることの葛藤。それらを乗り越えて最後は自分を大切にしてくれるパートナーを得ることで心が満たされる。

 

人生において大切なことは経済的な成功だけでなく、愛されているという実感を持って生きていけることなのでしょうね。自己効力感が低いことは悲劇に繋がるのだなとしみじみ思いました。

【映画】君の名前で僕を呼んで(ネタバレ有)

前々から気になっていた本作。友人が大絶賛していたのも後押しとなりやっと鑑賞。

 

 

一言で感想を言うと「切ない」ですね・・・。

 

気になるところをピックアップしてあれこれ言いたいと思います~。

 

①視点を変えると違う作品に感じられる

 本作は「恋愛」と「人生」というテーマ、それぞれの視点で見ると印象が変わる気がします。

 「恋愛」のみに主眼を置くと、正直目新しさもないですし、寧ろバッドエンドで胸糞悪いです。というか、大人につまみ食いされた可哀そうな純粋な子供の話ぽく感じられてしまって、オリバーふざけんな!てなります(笑)

 では「人生」に主眼を置くと、それなりに教訓が得られる作品だと思います。それは「自分らしく生きることの大切さ」だと思います。オリバーとエリオットはお互いにバイで、その気になれば女性とも付き合うことが出来ますが、その環境は異なります。オリバーは終盤で父親からゲイであることを受け入れてもらえないことを示唆しますが、一方、エリオットは理解のある両親に受け入れてもらうだけでなく、応援してもらっています。この両者の環境の違いがエンディングに繋がっているんですね。オリバーは世間体を選び女性と結婚することになる一方で、エリオットはガールフレンド候補だった女の子と一生友達でいることを約束する。即ち、エリオットはゲイとして生きていくことを選んだ訳です。

 この2人の対照的な生き方をみせることで、観客に人生について問いかけている気がします。我々は彼らと同じ環境ではないにしろ、必ず環境に左右されながら選択を迫られますよね。環境に順応するか逆らうか・・・。自分はどう生きているでしょうか。。。

 単なる恋愛映画として観ると正直つまらないですが、彼らに自分の人生を投影することで、人生について深く考えさせる作品だと思いました。

 

②とにかく主人公2人が美しい!

 とは言いつつ、恋愛映画の鉄板である美形同士の恋愛ものとしても十分に機能しています。とにかく2人が美しい。瑞々しいこと。。。性描写も割と生々しいのですが、この2人が演じるとなぜか爽やか・・・。ある意味、2人を愛でる作品でもあります。

 

 

 ストーリーに斬新さはありませんが、ジワジワと心に響いて残る作品だと思います。一見の価値ありですので是非!

 

 

 

 

 

 

【映画】ジャンゴ(ネタバレ有)

タランティーノ作品ブームにつき鑑賞。

この作品でも大好きなクリストフ・ヲルツさんが出ており期待大!

しかもレオ様やサミュエルさんも出ているとなれば期待しない訳がありません。

あと何気にゾーイ・ベルさんも出てたね。超チョイ役ですが。

本当に好きなんだなー。デス・プルーフでかなり危険なスタントもこなしてくれたから感謝の気持ちもあるのかしら。

 

 

さて、肝心の内容ですが。

イングロリアスの系譜を継ぐ史実を基にした復讐劇でしたが、テンポも良いですし何より感情移入し易い、とても分かり易いストーリー展開だったと思います。

愛する妻を助ける、という映画の王道ストーリーで言ってしまえば何の捻りはないのですが、敵である白人達の非道さがこれでもか!というくらい描かれていて、単なる妻奪還劇ではなく、スカッとする復讐劇に仕上げているところが恋愛物に興味のない層の心も掴んだのではないでしょうか。まさに自分もこっち派。

 

ただ、そこまで中毒性があるかと言えばノーですね。イングロリアスの方が断然中毒性は高かった。それは恐らくキャラのインパクトの違いだと思います。

今作は突出した強烈なキャラがいないんですよねぇ。レオ様の農場主やサミュさんの執事が当てはまりそうなのですが、今一歩なんですよ。恐らく途中から出てきて出演時間が少なく、キャラの掘り下げが完全に出来ていないことが原因だと思います。

いや、作品のキャラとしては十分に機能していますし良いんですよ。でもインパクトに欠ける。それはひとえにイングロリアスのランス大佐が強烈すぎたせい!

もうあのキャラと比べたらどの作品のキャラも霞みますわ。仕方ない。

でももう知ってしまったからには比べることは避けられない。。。

ああ、これが幸か不幸かどちらなのか・・・。

因みに今作でヲルツさんは二度目のアカデミー賞を受賞されたそうですが、正直前作程のインパクトは感じられなかったなーと。いや、素晴らしいことは変わりないんですけどね。しつこいようですが、ランス大佐が素晴らしすぎて!!

 

 

という訳で、作品としてはタランティーノ節が炸裂しており、緊張感、バイオレンス、魅力的なキャラ、テンポの良いストーリー展開、どれも観て損はない程の満足感を得られる作品です。

が、イングロリアス程のインパクトと中毒感は無いというのが個人的な感想。

これは好みの問題ですからね。。。ネットの評価だとジャンゴの方が評価が高いようですし。

 

とにもかくにも観て損は無しの良作です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【映画】謝罪の王様(ネタバレ有)

まず初めに言わせて頂きたい。

 

エンディングの某グループのMVじみた映像を見せられて満足度半減しましたよ。

あのグループ好きでも嫌いでもありませんでしたが、これで嫌いになりました。。。

 

いや、話の流れで自然な感じなら文句も言いませんよ。

今までの流れをぶった切るかのように、突然ダンス一色で、しかも内容と全然合わない自分達のスタイルをそのままぶつけてくるなんて、失礼にも程があると思います。

しかもあたかも後日談が始まるかのような演出をするなんて卑怯。

本当に最低。こんな押しつけがましい作品初めて見ました・・・。

結構ショックですよ。よくあれでOK出したな。

 

彼らのアンチでも何でもありません。好きな曲ならそれなりに聴きますし。

でも今回の演出は頂けない。

たかがエンディングで・・・なんて思えない。エンディングってすごく重要だと思いますし。終わりよければ全て良し、の反対だってあるんです。

 

 

とまぁ、かなり不快だったので初っ端からぶちまけてしまいましたが、

作品自体は面白かったです。テンポも良いですし、一見関係のない話が全て繋がった時の爽快感も良いです。こういう話好きなので、楽しく観れました。

なので、余計エンディングが許せない~~~~!!

空気読んで・・・・。お願い・・・・。

 

【映画】キルビル(ネタバレ有)

超有名作にも関わらず今まで一度も観たことがなかったのですが、

絶賛タランティーノブームが到来している今、避けては通れないだろうと意を決して鑑賞(大げさ)。

 

いやー、何というか、、、、趣味炸裂な映画ですね。

タランティーノさん、自分のやりたいことだけ詰め込んだでしょ?

観客や批評家の意見なんて全く気にしません!という意気込みがバンバン伝わってきました笑

 

もう、突っ込みどころは満載なのですが、そんな野暮なことはしてはいけません。

付いてこれる奴だけ付いてこい!!な作品ですね。

 

 

一言で表すなら、チャンバラ映画撮りたかったんだよ、人生で一度は!!

ということでしょう。

チャンバラシーンの尺がまー長い。というか、もうそれだけの映画。

 

あと感じたのは、彼って日本が大好きだし尊敬もしているんだろうけど、

アジアに対して偏見はあるんだろうなーと感じました。

悪意がないので良いんですけど、さすがに中国系アメリカ人であるルーシーリューに極道役やらせてへったくそな日本語喋らしてはあかんと思う。

ま、そんなことハリウッドでは当たり前なんでしょうけど、やはり日本人としていい気分はしませんね。。。日本語を一切話さず英語で通すか、流暢に話していたら許容できたかもしれませんが、

結構な尺とって超下手くそな日本語を話させていたのが気に食わない訳ですよ。

この映画の肝ではない部分なんでしょうけど、これは頂けない。

 

この点と尻切れトンボの結末以外は良かったんですけどね。

特にキャラ。本当、この監督は魅力的なキャラづくりが上手い。

今作で特に気に入ったのはダリル・ハンナ栗山千明

ダリル・ハンナなんて出番少なかったのに強烈すぎる。

DEATH PROOFのセリフにも彼女の名前が出てたので、監督のお気に入りなんでしょうね。

栗山千明はすごかった。こういう凄みのある役似合いますね。しかも出番多かった。

すごい。もっとこういう役やって欲しいなぁ。。。もったいない女優さんですね。

 

 

賛否両論ある作品だとは思いますが、誰かの為に作られた作品ではなく、

タランティーノの、タランティーノによる、タランティーノの為の作品なのだと感じました笑

外国人が作ったチャンバラ映画という感じは否めませんが、バイオレンス的要素の強いエンタメ作品としては面白いのかな。私好みではありませんでしたが笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【映画】パラサイト~半地下の家族~(ネタバレ有)

オスカーを受賞した超話題作ということで気になり鑑賞。

 

正直、韓国映画はバッドエンドの作品が多い印象なので敬遠していました。

いや、バッドエンドものは嫌いではないのですが、観るのに気力がいるのでどうしても身構えてしまうんですよね。

ですので、敢えてあらすじなどの事前情報はほぼ無い状態で観に行きました。

 

結果、衝撃的すぎるくらい面白くて、こりゃーアカデミー賞とるわ!と納得の傑作(何様w)。

何となくゲット・アウトと同じ雰囲気を感じました。ストーリーは全然似ていないのですが、スピーディーで無駄のない展開と伏線の回収が見事という点で同じ匂いを感じます。

 

以下、細かい感想です!

 

①「寄生」ではなく「共生」

監督がこの作品で伝えたかったこと、それは「寄生」ではなく「共生」する社会を目指すこと。それを聞いてこの作品をより理解することができましたし、決してハッピーエンドとは言えない結末にも希望を見出すことができました。

 

正直、鑑賞中は闇に引きずり込まれるかの如く、現実の格差社会や不安定な将来と結び付けてしまい気分が落ち込んでしまいそうになるのを必死で「これはフィクションだ!」と自分に言い聞かせながら、何とか最後まで観ることができました。

それでも鑑賞後の気分の落ち込みは消えず、いやーな感じのモヤモヤ感がつきまとっていたのですが、上記の監督のメッセージを聞いてかなり救われました。

 

本作の登場人物はみんな誰かに寄生しています。それは物理的、精神的の両方に言えること。例えば、父親は雇用主である社長に物理的に寄生しているのは明白ですが、

精神的にも徐々に寄生してしまった結果、最終的に彼を殺してしまったんだと思います。一見、匂いを馬鹿にされたことから始まった、上流階級(=社長)に対する憎悪による衝動的な犯行のように見えますが、それに加え、社長に対して雇用関係以上の親しい感情を抱き精神面でも寄生しようとした父親に対する社長の裏切りも一因だと思うんですよ。そのことは、犯行の直前の2人の会話に顕著に見られます。奥さんの我儘に振り回される社長に対し、奥さんをやんわり批判し同情した父親に対し、社長はこれも仕事の一貫だろ?とそれ以上の私的な会話を拒否しました。このことは、雇用関係から一歩踏み出し、あくまで友人として接しようとした父親に対する拒否であり裏切りだと捉えることができます。このことが直後の悲劇の引き金になったのかなと。

 

その他の登場人物についても皆が誰かに寄生している。だけど、そうではなく、お互いいが自立し、寄生ではなく共生していたとしたらあのような悲劇は起きなかった。

この作品を通じて人間が物理的にも精神的にもあらゆる面で自立し、お互いが共生していくことで社会のバランスがとれるのだと感じました。

人間の真理をここまで分かり易く示唆する作品てすごい・・・。

②登場人物

誰一人モブ的なキャラがいませんでした。全員個性的で物語に欠かせない人物。

これもすごい・・・。大抵、どの作品でも1人や2人いなくても良かったり、誰が演じても大差ないキャラがいると思うんですけど、この作品においてはそれが誰1人いなかった。すごい・・・。

特に半地下家族の娘。この人すごい・・・。存在感がすごい・・・。

この子にしかこの役は無理!と思わせられる。。。

この子は若干サイコパスかな?と思う描写もありましたが、それよりも上昇志向と自己中心的な傾向が強い性格なのかなと思いました。それが顕著だったのが、雇用主一家が留守中にリビングで宴会をしていたシーン。父親を中心に解雇まで貶めた運転手の行く末を案じていたのに、彼女だけその話題には興味を示さず、あくまで自分達のことを考えるべきだと主張していました。陥れた本人なのに・・・。

 

あとは地下に潜んでいた例の男。いやー、怪演とはまさにこのことを言うんでしょうね。すごかった。個人的には、レクター博士やシャイニングの親父に匹敵するくらいのホラーキャラだと思います。すごいわ。そして怖すぎる!トラウマになる人いそう・・・。奥さんもいい感じに変人でぶっ飛んでいて怖かった。

 

③結末

バッドエンドですし救いが見出せない結末だと個人的には思いました。

あくまで観客に対し反面教師となることに徹底していたと思います。

過度に楽観的になるのは頭を負傷した後遺症のようにも感じました。

直前のシーンで亡くなった妹の遺影の前で笑ってましたし。。。

決して後味は良くないのですが、やはり監督のメッセージのおかげで救われます。

寧ろそれがなかったら暫く立ち直れないくらいの鬱映画になっていたと思います・・・。まさにジョーカーがそれです・・・。

 

④総論

まさかこんなにも良い映画だとは思わなかったので、良い意味で期待を裏切られました。すごいわ。

また観たいな~。見逃していることが沢山ありそうなので何度でも観れる気がする・・・。

 

 

 

 

 

【映画】Once upon na time in Hollywood(ネタバレ有)※歴史的背景ほぼ無知

タランティーノ作品にハマり中なので、これは見ておかねば!とかなり楽しみにしていた作品。

 

映画館で観ようかかなり迷ったんですけど、その時はタランティーノといえば作品によってかなり好みが分かれるだろうなと思い、怖気づいてしまって結局レンタルされるまで見送ることにしました。

あとイングロリアス・バスターズみたいなバイオレンス色の強い作品だと映画館の大画面で観るのは辛いなーと思いまして。あの映画、一度観ただけなのですが、当時は結構トラウマレベルで怖かった記憶が強くて。。。もう一度リベンジしようとは思っているのですが。

 

という経緯もあるのとDEATH PROOFでタランティーノ熱が湧いてきたこともあり、

満を持して観た訳ですが・・・。

 

正直パルプフィクションやレザボアドッグスやDEATH PROOFの方が好みでした。

以下、細かい感想です。

 

①鑑賞後の疎外感の正体

まず、この映画はシャロン・テート事件とその背景となるヒッピー文化やハリウッドの歴史を知らないと面白さが半減してしまう作品です。

上記はネットで散々言われていたことでしたが、正直、「いやいや、言うてもシャロン・テートがカルト集団に殺されたってことだけ知っていれば大丈夫っしょ!」と半分しか真に受けていませんでした。

ですが!本当、先人達の言うことは素直に聞いておくべきですね・・・。

全くその通りでしたよ。想像以上に!!

どれくらい熟知しておくべきかというと、少なくともシャロン・テート事件に関わった人物達の経歴や生い立ち、思想、事件の惨状(どれだけメッタ刺しにされたか等)まで具体的に知っておくべきです。

そうでないと、エンディングでポカーンとしてしまい、もれなく消化不良と疎外感を味わうことになります。まさに自分がそうでしたから間違いありません。。。

 

というのも、この作品はタランティーノによる悪しきハリウッドの歴史や慣習の是正の物語なんですよね。

シャロン・テート事件は、ヒッピー文化を衰退させ、当時のハリウッドのトレンドにまで影響を及ぼすほど衝撃的な事件だった(らしい)。また、被害者本人だけでなく、夫であったロマン・ポランスキーへのいわれのない誹謗中傷だけでなく、無関係だったブルース・リーにまで容疑がかけられる始末。監督は事件後に作風が変わったと言います。

そのようなハリウッドの負の歴史を改変させることで、映画や演技に対して真摯に向き合う純粋な映画人であった彼らを救済し、それは架空の人物として描かれている俳優のリックをも救う。そうすることで、現代の純粋に良い映画を作りたい!という映画人達に対してリスペクトの意を表しているのだと思います。

それだけではありません。劇中、クリフが性交渉を仄めかすヒッピーの少女に対し、18歳以上か証明するよう迫ります。これ、すごく不自然ですよね。というのも、この時代にそんなことしていた人、誰もいなかったと思うんですよ。ここにも監督の悪しき慣習を是正したいという願望が込められており、明らかに昨今の三―トゥー運動を意識してのことだと推測されます。監督はあのワインスタインと懇意に、彼のセクハラ行為を黙認していたものの、その時の自分を後悔している旨の発言をしているようですし。

 

その他にも、往年のスターだったと思われる人物や映画が多数出てきており、当時のハリウッドを再現するという監督の趣味全開なのですが、これも知識がないとなんのこっちゃ!と言う感じで置いてけぼりにされます。リックが大脱走のカメラテストをするシーン(当時の映像との合成)なんて別に重要でもないのに結構な尺取ってますから、完全に監督の趣味ですよね。純粋に当時を再現することを楽しんでいる様子が伺えます。

 

が!そんなのハリウッド通でもない限り知らないしテンション上がらないですよ~~!!単に勉強不足な自分への言い訳ですが、ここまで事前知識を必要とする映画って初めてですし、ちょっと不満に思っちゃいますよ・・・。

せめて予習することを告知して欲しかったですね。「知っていた方が楽しめる」レベルではなく、「必ず調べておいてください!」レベルで。

 

という訳で人によっては(というか恐らく大多数の人)消化不良と疎外感を大いに味わうことになります笑

 

②実在の人物と架空の人物の交錯は果たして上手くいったのか

 

 まず架空の人物であるリックとクリフについて見てみましょう。

まずリック。彼は100点満点に近いくらい魅力的なキャラだと思いました。

架空なのに実在していそうだと思わせるくらい、人間味溢れるキャラだったと思います。彼はハリウッドでキャリアを重ねる俳優を体現させたからだと推測できます。浮き沈みのある俳優達を間近で見てきた監督の観察眼はさすがだなと思わせられます。

特にお気に入りのシーンは、セリフが上手く言えずにトレーラーに籠って暴れ狂うシーン。前の晩飲んだ酒の量を後悔するセリフ(3~4杯で止めておけば良かったのに8杯も飲んじまった!)は秀逸です。誰でも経験してそうなことなので親近感を覚えるんですよね。こういうセリフ回しは本当に上手い監督です。言わずもがな、ディカプリオの演技も良い。演技の良し悪しを判断する能力は自分にはありませんが、このシーンの彼は本当にリックだったと感じました。

その他、序盤で自分にキャリアを悲観しクリフの前で泣き出すシーンも秀逸。この短いシーンでリックの人柄とクリフとの関係性が的確に描写されています。

 

 

次にクリフ。彼はこの作品において言わば歴史の是正請負人。未成年淫行の阻止とヒッピーの虐殺が彼の最大の任務でしょう。そのせいか、人間味がなく架空のキャラの域を超えない不自然な人物のように感じました。ブルースリーを華麗に倒したり、ヒッピーを華麗に虐殺したり、長年連れ添ったリックに解雇されても動じない。まさにスーパーマンの如くある意味完璧な人物なんですけど、「こんな人いないよな」とどこかで感じてしまうキャラ。リックが人間味溢れるキャラで良い味出しているだけに、少しもったいないように感じました。

 

 

余談ですが、監督のお気に入り女優(と思われる)ゾーイ・ベルカート・ラッセルが夫婦役でニヤリとしてしまいました。こういう人多いと思いますが・・・。

あのDEATH PROOFで殺し合った仲の二人が夫婦役って面白すぎる笑

 

 

次は実在のキャラ達。正直、シャロン・テートを始め、彼らには全く興味が沸いてこないんですよね・・・。というのもキャラが多すぎる!あと内面の描写が少なすぎて共感いない。君たち、彼らのこと知ってるから詳しいことは省いていいよね?って感じが伝わってきます。シャロンは他のキャラに比べれば描写は多いですが、彼女の良いところばかり意図的に見せられている気がして釈然としないんですよね。

まぁ、この作品における彼女の役目は「純粋な映画人」「悲劇のヒロイン(史実上では」ですから、これくらいの描写で良いのでしょうが、それが逆にキャラとしての魅力半減させていると思うんですよねぇ。出番の多さの割には印象に残らなかったです。

であるが故なのか、史実に反して助かっても特に感動がないんですよね。史実に詳しくことが大きな原因だと思いますが、それに加え、劇中の彼女の魅力のなさも一役買っている気がします。

 

 

最後にヒッピー達。何気にダコタ・ファニングが出てましたが最初分からなかったです。それくらい全く華がなかった。。。良いのか悪いのか・・・。

さて、ヒッピー集団は今作において非常に重要な役割を担っています。彼らを成敗することが今作の最大ミッションですから。ですが、史実をほぼ知らない人間にとっては、不親切なくらい描写が曖昧で少なく、エンディングでのリックやクリフによる虐殺を納得させるには不十分だったと思います。この作品だけみれば、彼らはチャールズという絶対的教祖に従う無知で純粋な若者であり、あのように虐殺するに値する人間達だったのか、という疑問が拭えないんですよ。まぁ、やり過ぎなんじゃない!?可哀そうじゃん!となる訳で。もちろん、史実をしていたらそうは思いませんし、自業自得じゃ!となる訳ですが、劇中の描写だけではそうは思えないんです。もっと彼らの残虐性や悪行を描写すべきだったと思います。史実でも、シャロン殺しの前に残虐の犯罪をしているようですし、そういうシーンを入れるべきだった。観客任せにするのは頂けない。

映画の再現シーンなんてすっ飛ばしてこっちにもっと力入れてよ~。じゃないと観客置いてけぼりよ~!

 

 

というか、史実と架空の物語を交錯させるのって難しいですね。バランス良くしないと今作のようにちぐはぐになってしまう。

その点、同じ歴史改変ものであるイングロリアス・バスターズはバランスが良かったと思います。それは恐らく歴史の題材の知名度の違いだと思います。ナチスを知らない者はほぼいないでしょうし、その残虐性は言わずもがなという認識の人が大半でしょう。ですから、エンディングを始めとする悪役に対する徹底的な残虐行為も容認出来た訳です。

一方、今作はナチス程の知名度はありません。そういう一般的に知名度の低い史実であることをもっと制作陣には自覚して欲しかった。そうすれば、もっと丁寧に史実を描写して観客との認識のギャップを埋められたと思うんですよね。その点が非常に残念です。

 

 

③総評

観れば観るほど、そして史実を知れば知るほど面白みを感じる作品なので、嫌いではないですし、恐らく見続けたら癖になって好きになる映画だと思います。ですが、あまりにも観客の知識に頼った作りであることが非常に残念だなと。これは賛否両論で好みの問題なのでしょうが、私はその点は好きではありませんでした。個々の演出は秀逸なだけに残念です!

 

 

これを機に敬遠していたイングロリアス・バスターズを再鑑賞しようと思います。今作との比較も面白そうですしね!