【映画】ニーゼと光のアトリエ

素晴らしいブラジル映画のエリート・スクワットに感銘を受け、良質なブラジル映画を探していたところこの作品を見つけ視聴。

 

統合失調症をはじめとする精神疾患に対するリハビリテーションの歴史を勉強するのにはとても良い作品だと思います。また、現在のリハビリでは当たり前になりつつありますが、健常者と変わらない生活様式で過ごす(病衣ではなく私服を着るなど)ことで患者のQOLを向上させる試みや、患者ではなくクライアントと呼ぶことで医療者の権威主義的体質を変えるなど、とても勉強になります。

科学が席巻していた時代にリハビリは軽んじられ、主人公であるニーゼの試みも院長や同僚からは見向きもされませんが、そこに風穴を空けたのは全く分野の異なるアートだったというのも興味深い。やはり既存の体制を変えるには異分野からのアプローチが有効なんですね。周りを上手く巻き込んでいくニーゼの手法はぜひ参考にしたいですね。

 

ただストーリー展開は大分不満です。淡々と出来事を綴っているだけで各々の登場人物や事件の深堀がなされていないので印象が軽くなってしまっている。また結局どうなったのか示されていないことが多すぎてスッキリしない。退院した患者のその後は?三角関係はどうなった?臨時講師に失恋して傷心の彼は立ち直ったの?!言い出したらキリがない。そして最大の謎は、結局あの病院はどうなったの?!ということ・・・。

映画のラストは患者の絵の個展でしたが、それよりも科学療法第一主義だった病院とニーゼの戦いの結末を一番知りたい訳ですよ。それがこの映画の主題だと思っていたので、そこを描ききらないとダメでしょう。ニーゼや患者本人たちのインタビューや映像、写真も映し出されましたが、その核心部分には触れていませんし。

アート映画ってことなのかな。それなら成り立つかと思いますが、そういう気持ちで観ていないのでモヤモヤします!

 

でもブラジルのリハビリの歴史を勉強するための登竜門としては良作だと思います。

絵も綺麗ですし。おススメです!