【ドラマ】名探偵ポワロ シリーズ12 最終話 カーテン(ネタバレ有)

原作が忠実に再現されておりファンとしては嬉しい演出でした。

 

ポワロがあれだけ憎んでいた殺人を自ら犯したことの是非について深く考えさせられます。法で裁けない犯罪者によって自分の大切な人が傷つけられてしまうとしたら。

本人達に警告したとしても事が起こっていなければ真に受けないでしょうし、八方塞りな状況の中で自分ならどうするか。

 

クリスティーの作品は後期になればなる程、本作のように善と悪が明確に分けられない作品が多いような気がします。

それは彼女自身の葛藤の表れなのでしょう。

初期の頃の単純明快な作風から、トリックよりは登場人物の心理描写や愛に重きを置くようになり、後期は複雑な人間心理と善悪がメイン。そんな印象を受けます。

 

また、人の心理を巧みに操り間接的に殺人を犯す真犯人の描写も見所の一つだと思います。昨今、このようなサイコパスタイプのキャラは珍しくありませんが、半世紀以上も前にこのような人物を巧みに描いていたのはすごいと思いました。しかも養育環境が関連していることまできちんと描いているのが秀逸です。ちゃんと調べたんだろうなと感心させられます。

 

 

今作で一つ残念だったことは終わり方ですかね。ポワロの自供の回想で終わりますが、原作と同様にへースティングスの言葉で終わって欲しかった。あの終わり方だとすごくモヤモヤするんですよ・・・。理由ははっきりとは分からないのですが、恐らく、この答えのないポワロが犯してしまった犯罪に対する誰かの答えが聞きたいからなのかな、と。そうすることで、自分一人で抱えるにはあまりに重いこの事実を誰かと分かち合い、少しでも楽になりたいのかなと・・・。

いや、フィクションと分かっているんですが、現実社会の問題とも通ずるテーマなので単にドラマと割り切れないというか・・・。そういう意味では、すごく心理的負担が重い作品なので気軽に見れるものではない作品ですね・・・。まあ、こういう問題提起をしてくれる作品は大好きなのでいいんですけどね。

 

ポワロファンなら必見、そうでないミステリーファンであればポワロの作品を全て観てから視聴することをお勧めします!